集団帰国が無事終了しました。
皆さまの暖かいご支援のおかげです。
本当にありがとうございました!
 10月11日、日本に一時帰国したフィリピン残留日本人2世11人、1世の妻1人、3世ほか7人の計19人は、1週間の日程を終え、16日、無事フィリピンに帰りました。
滞在中は天候にも恵まれ、全員、健康で過ごすことができました。心配した帰国費用も、日本全国からの暖かいご支援をいただき、短期間になんと総額230万円の寄付が集まりました!収支をみれば赤字ですが、今後、地道に補っていきます。ご支援、ご協力いただいた皆さま、心から御礼申し上げます。



10月11日(火)午後1時 成田空港到着 待合室にて記者会見

多くのメディアを前に、帰国者たちは臆することなく一人ひとり、自己紹介、日本で何をしたいか、自分の生い立ちなどを話しました。「父の国、日本を見ることができてうれしい」(ヨシカワメレシアさん)、「日本政府に戸籍をくださいとお願いしたい」(アリチスミコさん)。ハマダイグナシアさん(1世妻)は「夫は私にとても親切で、日本語や日本の歌を教えてくれた」といってその歌を歌ってくれました。レティシア・ダルーカさんは「母はバゴボ族の兵士に殺された。戦争がなければ私は孤児になることもなかったと思うとくやしいが、皆さんの支援で日本に来れたことを感謝している。今私は日本とのつながりをみつけたい」といって涙しました。

午後7時 ホテルで生き別れた兄との再会を果たした民子さん

成田空港からバスで1時半。宿泊先のホテルのラウンジで、赤塚民子さんは終戦時に生き別れたお兄さんの赤塚俊夫さんと60年ぶりに再会しました。一瞬の沈黙のあと、ふたりは泣きながら抱き合いました。
「会えるとは思わなかった」「どうして迎えに来てくれなかったの」・・・民子さんの言葉を通訳の田中愛子さんが伝えます。「小さいときのまんまだ・・・」と俊夫さん。「弟ともう1人の妹アサコは収容所で亡くなった。俺と親父だけ引き揚げて横須賀について、それから鹿児島へ。小さい頃は俺もいじめられたよ」「おやじも気にしてたけど、俺を育てるのに必死だったからね。どうしようもなかった」。
「お兄さんが小さい頃食べていたバナナとマンゴーを買ってきたの」といって民子さんはお土産をお兄さんに渡しました。「本当によかった。これからは連絡をとりあってがんばろう」といって、俊夫さんは泣きじゃくる民子さんを何度も励ましていました。

 帰国グループ滞在中、俊夫さんは毎日民子さんと行動をともにし、民子さんは本当にうれしそうでした。付き添いで同行した息子の妻のアマリアさんいわく「お義母さんがこんなに笑っているのを見たのは初めて・・」。そして最終日の午前中、ホテルの部屋で「せっかく会えたのに、再び別れなければならないのがつらい・・」といって泣く民子さんを、「そんなに泣くな。がんばれ」といって励ます俊夫さんの姿が印象的でした。
10月12日(水)午前10時-12時



さくら共同法律事務所大会議室にて打ち合わせ。弁護士からの全体説明のあと、就籍申立する8人(7人予定でしたが1人急遽追加)に、個別面談が行われました。







午後1時45分 家庭裁判所へ申し立て


予定より15分遅れて全員で家庭裁判所へ。入り口ではメディアのフラッシュを浴びながら中に入りました。特別待遇で会議室に通され、そこで事件番号をもらいました。
「今、あなた方の申立が受理されました。これから半年か1年かかるかもしれませんが、多くの未判明の方々の中であなた方はトップバッターです。我々弁護士も全力を尽くしますので皆さんも協力してください」と河合弁護士が力強く語りかけました。



午後2時45分 司法記者会で記者会見

今回就籍の申立をした8人(ヨシカワメレシアさん、アリチスミコさん、ヤナダタツさん、ハマモトマサキさん、ハマダプリモロサさん、サカモトフミコさん、レティシアダルーカさん)が壇上に上がり、一人ひとり、申立をした感想や日本政府への要望を発言しました。
「今回日本に来れたことで、一筋の光が見えてきたようだ」(サカモトさん)、「日本人なのにどうして日本にいかないの?と知人に言われることがあったが、私はそんな考えは否定していた。しかし今は、私は日本とのつながりを確認したい、日本の親戚に会えるなら会いたいと思っている」(レティシア・ダルーカさん)など、みな緊張しながらも思いのたけを話しました。

午後6時30分 中華料理店で夕食




来日二日目の夜・・・就籍申立と記者会見、お疲れ様でした!

 
10月13日(木)午前ー午後1時半




ホテルの各部屋でシンポジウム発言の予行練習。PNLSCスタッフが各部屋を訪問し、練習台になり、励ましました。近くのシンポジウム会場へは、皆でぞろぞろと徒歩で向かいました。






午後2時 集団帰国シンポジウム開会

四ツ谷の主婦会館にてシンポジウムが開催されました。PNLSC代表理事の河合弁護士から、フィリピン日系人の歴史や現状について説明と問題提起がありました。集団帰国の共催団体であるフィリピン日系人連合会の寺岡会長(代読)、後援団体の日本フィリピン企業協議会・伊藤会長、厚生労働省・尾辻大臣(代読)の挨拶を承りました。
その後は、日系人2世ひとりひとりが、父の記憶やこれまでの経験、現在の思いを語りました。
ヨシカワメレシアさんは、ケノンロード建設に従事した父と父の作ったケチャもちなどの思い出を、アリチスミコさんは、父との死別と戦争での逃亡体験を、ヤナダタツさんは、日本軍の通訳として働いた父の死と、軍による葬儀、空爆による母の死について語りました。
ハマモトマサキさんは、当時知り合いだった日本人や兵士たちの名を挙げながら、日本占領期にフィリピンゲリラの襲撃にあって亡くなった父について語りました。
一世の妻である、ハマダイグナシアさんは、夫との恋愛と結婚、戦争による別離、今でも会いたい思いを述べました。時間の関係で、残念ながらその後の帰国者は、自己紹介と一言を述べるに留まりました。今回、証拠不足で就籍申し立てを断念したタクミミノルさんは、父が日本人であることしかわからない、と発言しました。今回、妹・赤塚民子さんと再会した赤塚俊夫さんからは、再会をもたらした支援活動に対し、感謝の意が述べられました。
帰国者の発言の後、青木弁護士が今回の集団就籍申し立ての報告を行いました。
 
 質疑応答では、俘虜銘々票が見つかったサカモトフミコさんとカトウカズオさんに対して質問があり、フミコさんは、銘々表にあった父の写真を見ることができた喜びを語り、カズオさんは、当時、兄弟と共に収容所に入り、養母に引き取られフィリピンに残留した経緯を説明しました。ヨシカワメレシアさんの父の友人を知っている来場者からも、当時の様子が語られました。
また、ハマダプリモロサさんは、今回の来日に際し、フィリピン旅券ではない「渡航書」が発行され、書類には「無国籍者」と書かれたことに触れ、混乱した気持ちとアイデンティティを確認したいという思いを語りました。最後に、レティシアダルーカさんが、バゴボ族兵士により母を殺された鮮烈な思い出を涙ながらに話しました。





午後4時30分 懇親会



シンポジウム終了後、帰国者の一行とシンポジウム来場者らは同ビル内レストランにて懇親会を持ちました。来場者からは12名が参加され、帰国を共に祝い、歓談のときを過ごしました。





10月14日(金)10時15分 外務省 南東アジア第二課 表敬訪問

フィリピン日系人の調査を過去4回にわたり実施した当課を訪問し、PNLSCの白弁護士、PNJK(ダバオ日系人会)ジュセブン会長、日本企業協議会伊藤会長から、南東アジア第二課課長の滝崎成樹様と外務事務官の山本真奈美様へ感謝の気持ちを伝えました。帰国者一人ひとりが滝崎課長へ自己紹介と日本人として認めてもらいたいという希望を述べました。PNLSCとダバオ日系人会から、さらなる第5回目の調査実施も要請しました。

11時〜17時 東京観光

東京タワーの展望台に上り、都心を上から眺めました。
その後、浅草寺へ向かい、寺境内と仲見世の通りを歩きました。日系人は緊張から解放され、楽しんで観光していました。



10月15日(土)フリーの日

数人が、日本で働いている親戚に会い、別行動をとりました。民子さんはお兄さんの自宅へ。その他の多くは、一緒に電車体験。「人生で始めて乗った」「戦前、木材を運ぶ鉄道に乗って以来だ。」という二世の声が。四ツ谷から錦糸町の百円ショップへ。「家族や近所の人が期待しているから」と、チョコやお菓子をお土産に買っていました。昼食はすしに挑戦。「生魚は食べられない」と言っていたものの、かなり平らげました。午後は上野のアメ横を見て歩きました。フィリピンの市場と雰囲気が似ているのか、皆リラックスして楽しみました。

10月16日(日) フィリピンへ

河合代表とゆっくり昼食をとり、数人はセントイグナチオ教会のミサへ。ホテルのラウンジでくつろいだ後、成田空港へ出発。バスの中では、「夢のような時だった」「皆の支援がなかったらこんな体験はできなかった」などの言葉が漏れました。一行は全旅程を終了、ついに、お別れのときがきました。無事にチェックインを済ませ、午後7時の飛行機で一行は旅立っていきました。

皆さん、お元気で!今回一行が日本で行った、就籍申し立てに許可が下りるよう、弁護士、事務局とがんばっていきます。







表記の件の問い合わせは、フィリピン日系人リーガルサポートセンターまでお願いいたします。

NPO法人 フィリピン日系人リーガルサポートセンター(PNLSC)
〒160-0004 新宿区四谷1-21 戸田ビル4階
Tel 03-3355-8861 Fax 03-3355-8862 E-mail info@pnlsc.com HP http://www.pnlsc.com
担当:石井、松本